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DataSpiderがクラウドサービスに! 遂に発表されたクラウド型データインテグレーションサービス「DataSpider Cloud」について開発者が語る

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2016年12月8日に発表されたクラウド型データインテグレーションサービス「DataSpider Cloud」。2017年1月22日から提供が開始される本サービスは、豊富なデータ連携機能と高いユーザビリティを誇るデータ連携ツール「DataSpider Servista」が100%クラウドネイティブなiPaaSとして手軽に利用できるもので、今後の大きな活用の広がりが期待できる。

DataSpider Cloudは、DataSpider Servista(以下DataSpider)が持つ多彩なデータ連携機能が利用できるのはもちろん、クラウドサービス向けにチューンナップされたインストールレスNativeクライアント「Studio」を搭載。その軽快な操作性を活かしてデータ連携処理の効率的な開発が可能だ。

また、クラウドサービスとして運用するためのさまざまな運用機能も本サービス向けに開発されており、簡単にさまざまな設定や運用処理を行うことができる。

本サービスの開発を担当したのが、株式会社アプレッソと株式会社テラスカイの共同開発チームだ。DataSpiderの開発ベンダーである株式会社アプレッソ、そして先駆的なクラウド型データ連携サービス「SkyOnDemand」を展開してきたクラウドiPaaSリーダーの株式会社テラスカイ。フロントエンド、バックエンド、クラウド、データ連携など双方が持つ多様な分野の技術を持ち寄り、相互作用することによって本サービスの開発が行われた。

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開発者から見たDataSpider Cloudとはどのようなサービスなのか? どのように開発が行われたのか? そして今後のDataSpider Cloudはどのような進化が待っているのか? アプレッソ・テラスカイの共同開発チームの開発者に話を聞いてみた。

取材・文:dstn編集部

(※) 本記事はアプレッソ Advent Calendar 2016 - Qiita 18日目の記事です

DataSpiderの「手触りの良さ」を「進化させる」、その思いで開発をした

まず、遂に発表されたDataSpider Cloudとはどのような製品なのだろうか? アプレッソ開発チームの細見氏はこのように語る。

DataSpiderの現在の最新バージョン4.0をベースに、テラスカイ社の「SkyOnDemand」を組み合わせて拡張した汎用的なクラウドサービスです。DataSpiderはExcelファイルやデータベースなどオンプレミスのシステムのデータ連携はもちろん、近年はAmazon Web Services(AWS)やセールスフォース、kintone、Azure、Googleなど様々なクラウドサービスとの連携アダプタ・トリガー機能も多く搭載しました。

その多種多様な連携機能をクラウド・サービスとして手軽に利用できるようにしたのがDataSpider Cloudです」(アプレッソ 細見氏)

f:id:tokita93:20161216113854p:plain ▲DataSpiderに搭載された豊富なアダプタ・トリガー群で、ノンコーディングでさまざまなアプリケーションやデータベース、ファイルなど簡単に連携が可能だ

もともとDataSpiderは「On Cloud」への対応として、ブラウザ上で利用できる開発クライアントStudio for Webという機能があった。DataSpider CloudではStudio for Webをベースに、操作性をさらに高めたインストールレスなNativeクライアントのStudioが利用できるようになっている。

従来のStudio for WebはSilverlightで実装されていました。ただしブラウザ上で動作させるために機能的な制限があり、またSilverlightのサポート終了も近づいているということも考慮して、DataSpider Cloudでは新しいプラットフォームでよりユーザービリティの高いクライアントを提供したいという思いがありました。

HTML5などさまざまな技術を検討した結果、WindowsのWPF(Windows Presentation Foundation)を採用したインストールレスのネイティブ・クライアントとして提供することにしました。」(アプレッソ 清水氏)

f:id:tokita93:20161215173459p:plain ▲DataSpider Cloudに搭載されたインストールレスNativeクライアントのStudio(画面は開発中のものです)

さらにクライアントの刷新に加えて、「クラウドプラットフォーム」でより使いやすくするためのさまざまな改善が行われていると、アプレッソ開発チームの細見氏は語る。

例えばDataSpiderのログはシステムを運用していくための重要な情報ですが、DataSpider Servistaではすべてのログを見るためにはOSのファイルシステムにアクセスする必要がありました。DataSpider Cloudではログを確認するための作業がStudio上ですべて行えます。またダウンロード後すぐにディレクトリやファイルを開くことができるようにし、一連のステップがストレス無く行えるようにしています。

DataSpider Cloudでは、従来のDataSpider Servistaにあった「手触りの良さ」を決して損なうことなく、「進化させる」という意気込みで開発しました」(アプレッソ 細見氏)

DataSpider Cloudの運用のために一から開発されたシンプルでモダンな管理画面。その操作性を体験してほしい

DataSpiderは企業内で使用されることを想定したパッケージ・ソフトウェアであるため、そのままではクラウド・サービスとしてリリースすることは不可能だ。テラスカイ社は先駆的に展開していたiPaaSサービス「SkyOnDemand」で培った技術を活かしつつ、さらにDataSpider Cloud向けに新機能を開発したとのころだ。テラスカイ開発チームの荒木氏は以下のように語る。

テラスカイの開発チームではSkyOnDemandのクラウド・プラットフォームをベースに、DataSpider Cloud向けにさまざまな拡張や改修を行いました。Amazon EC2の仮想インスタンスの構築を始め、新しいクライアントの配布システムの設計・実装や、ユーザーが個別にパッチを当てる機能の実装などクラウドサービスとしてユーザーが必要になる機能をさまざまに実装しました。

より手軽に利用できるようになったDataSpiderを、ぜひこれまで以上に活用してほしいです」(テラスカイ 荒木氏)

パッケージ・ソフトウェアとクラウドサービスが大きく異なるのが、「バージョンアップ」の際の動作だ。パッケージ・ソフトウェアではユーザーが自身のオペレーションによってバージョンアップ作業を行うのが通例であるが、クラウドサービスでは一般的に自動的にバージョンアップがなされる。

ミッション・クリティカルなシステムの場合、この自動的なバージョンアップが動作に影響を与え、予期しない処理結果となってしまう可能性がある。これに対してもDataSpider Cloudは「プレリリース」という機能で対応しているとテラスカイの中山氏は言う。

自動的なバージョンアップは、ユーザーが自身でバージョンアップ作業をすることなく最新機能が自動的に適用されるというメリットがある反面、未検証の新機能が適用されてしまうという懸念があります。SkyOnDemandから用意されていた「プレリリース機能」は、バージョンアップ適用後の動作をバージョンアップ前に検証できる機能です。これにより、十分に検証を行った上で新しいバージョンのDataSpider Cloudを適用することができます。」(テラスカイ 中山氏)

またクラウドサービスとして運用するために開発された管理画面は、DataSpider Cloudのためにテラスカイ開発チームが一から開発した新機能とのことだ。

f:id:tokita93:20161216113052p:plain ▲連携サーバーやネットワーク・アクセスの管理ができる管理画面。通信量の確認など利用状況の確認も可能だ(画面は開発中のものです)

DataSpiderをクラウドサービスとして運用するためには、連携サーバーやネットワーク・アクセスをより容易に管理することができるようにする必要がありました。そのために、我々のチームではStudioとは別に、管理画面を一から開発しました。とてもシンプルでモダンな作りを意識した画面設計となっていると思うので、ぜひ操作性を試していただきたいです」(テラスカイ 荒木氏)

データ連携のアプレッソとクラウドのテラスカイ。双方の相乗効果が製品に結実した

「データ連携」のアプレッソと「クラウド」のテラスカイという異なるバックグラウンド技術を持つ2社。この2つの開発チームの共同作業はどのように行われたのであろうか? アプレッソ開発チームの細見氏によると、「ミーティングを定期的に行い方向性を確認して進めていきました。技術情報を素早い共有はSlackで、課題管理をCybozu Liveで行いました」とのことだ。

ではそれぞれの担当はどのようなものだったのか? アプレッソ開発チームの細見氏はこのように言う。

テラスカイ開発チームにはインフラ全般を担当していただきました。SkyOnDemandなどで培ったクラウドサービスの運用ノウハウは我々には無いものであり、絶大な信頼を持ってお任せしました。実際に、その深い知識には感服しましたね。またシステム・インテグレーターとしての手順を尽くした開発の進行は素晴らしいと感じました。

我々のアプレッソ開発チームは安心してDataSpiderエンジンの改良に全力投球することができました。このような明確な役割分けを行うことができたので、スピーディに開発を行うことができたと思います。」(アプレッソ 細見氏)

このような流れで開発されたDataSpider Cloud。2つのチームが相互に刺激し合い、苦労しながらも良い相互作用が発揮されて開発が進んだようだ。テラスカイの荒木氏はこのように語った。

苦労もありましたが、学ぶこともとても多い開発でしたね。アプレッソ開発チームのアイディアの創出、それを検証・実現まで素早くやってしまうフットワークの軽さには感心しました。

開発作業の中でデータ連携のアプレッソとクラウドのテラスカイという2つのノウハウを持ち寄り、相乗的な効果を得ることができ、それがDataSpider Cloudという製品に結実していると思います」(テラスカイ 荒木氏)

「使い勝手の良い」クラウドサービスとは? 開発チームが挑んだ難問

DataSpiderとSkyOnDemandというベースとなる製品があったとはいえ、「クラウドサービス」をリリースするというのは当然のことながら容易なことではないはずである。具体的にどのような課題があり、どのように克服していったのかは、開発者としては非常に興味深いところである。

まずはテラスカイの中山氏に聞いてみた。

DataSpiderエンジンとクラウド基盤という明確な役割分担は非常に効率的ではあったんですが、やはりそこで問題になるのはシステム統合。予め準備をしてきたとはいえ、プロジェクトの終盤に統合を行うことになり、問題解決のスピード感が求められました。

しかし共同開発チームの得意な技術分野からアイディアを出し合い、我々だけでは実現できなかったアプローチでスピーディに解決することが無事できてほっとしました。共同開発の強みが活きたところですね。」(テラスカイ 中山氏)

また、前述したバージョンアップ前の「プレリリース機能」は特に今回の開発をするあたってはハイライトとなったようだ。

SkyOnDemandでも同様の機能は用意していたのですが、DataSpider Cloudでは基盤の再設計から行ったためその仕組みがそのままでは適用できず、対応方法に悩みました。しかし我々はこのような機能はクラウドサービスに一般的なものであり、ユーザーに信頼していただくクラウド・サービスの使い勝手としては必須だと考えています。苦労はしましたが、DataSpider Cloud上で問題なく機能を利用できるように無事対応できました。」(テラスカイ 荒木氏)

アプレッソ側では、DataSpider Cloud向けにプラットフォームを刷新したStudioの実装がやはり最大の焦点となった模様だ。特に「SilverlightとWPFの違いを1つ1つ対応していくのが大変でした」とアプレッソの清水氏は言う。

同じC#のコードではあるんですが、大きなところから小さなところまでさまざまな挙動や見た目の違いがありました。例えばリンクボタンやフォームなどのコントロール・コンポーネントを自作し直したり、画像がなぜか大きくなったり・・・。ドキュメントに無い動作もあったりして、嵌ってしまうことも多くありましたね。1つ1つ検証しながら潰していきました。大変な作業ではありましたが、その結果より使いやすく、これからも長く使えるクライアントに仕上がったと思います。」(アプレッソ 清水氏)

また、データ連携処理の開発効率に直結するクライアントだけに、「使い勝手」に大きなこだわりをもって開発を行っていたようだ。

従来のStudio for Webに比べ、大きくユーザビリティは向上していると思います。まずサクサクと動く軽快な動作感を感じていただけると思います。またさまざまなキーボード・ショートカットが使えるようになり、Ctr+Sで保存、F1キーでヘルプ画面表示など、スピーディな一連の操作が可能です。その他にもさまざまな工夫がしているので、ぜひその使い勝手を体験していただきたいですね。」 (アプレッソ 細見氏)

双方の開発者の言葉に「使い勝手」というキーワードが共通していることが見てとれる。いかにユーザーに「良い使い勝手」という価値を届けるか。アプレッソとテラスカイの開発者はその難問に挑み、試行錯誤の結果辿り着いた解が、DataSpider Cloudにあるようだ。

DataSpider Cloudの未来、「クラウドサービスのあるべき姿」への進化へ向けて

いよいよ提供日の2017年1月22日が近づいてきたDataSpider Cloud。現在の心境について聞いてみると、テラスカイの荒木氏は「大きな達成感がありますね」と笑顔で語る。

もともとSkyOnDemandはDataSpiderのOEMだったんですが、その機能がDataSpiderの一部になるということは私にとってとても感慨深いです。テラスカイは創業時より「クラウド専業」を掲げて事業を展開してきたんですが、それが正しかったことが裏付けられるようで、とても嬉しいです。」(テラスカイ荒木氏)

その一方で、今回のリリースでは対応できなかった機能に関してアイディアが溢れているようだ。テラスカイの中山氏はこう語ってくれた。

現在はご利用申し込みから実際のご利用までに少しお時間をいただいてしまうことがあります。これをもっと自動的に素早く提供できるようにしたいです。また、SkyOnDemandでは出来なかった機動的なアップデートや、独自アダプタの提供などやりたいことは沢山あります。 クラウドサービスのあるべき姿に進化させたいですね。」(テラスカイ 中山氏)

アプレッソ細見氏も、Studioがブラウザの制約から開放されたスタンドアロンのクライアントになったことで、「一定のユーザビリティ向上は果たせた」としながらも、さらなる「手触りの良さ」の向上について意欲を燃やす。

まずは"できなかったことをできるようにする"ということを優先して今回のプロジェクトは開発を行いました。まだまだ自分としては、「クラウドサービス」だから提供できる価値へむけて進化すべきところが多くあると思っています。また、Undo/Redoなどクライアント・アプリケーションとして必要な機能の搭載がまだ不完全であり、そのような「手触りの良さ」を継続して取り組んでいきたいと考えています。

ロードマップではv1.1では多言語対応・Thunderbus(オンプレミス連携)対応、さらにv2.0も計画されています。今後も足を止めることなく加速して、DataSpider Cloudを立派なサービスに育てていきたいという思いがあります。」(アプレッソ細見氏)

f:id:tokita93:20161216152252p:plain ▲DataSpider Cloudのロードマップ。v1.1、そしてv2.0に向けてさまざまな新機能が計画されている

DataSpiderをこれまで活用してきた人にも、これから使用してみたい人にもDataSpider Cloudのメリットは大きい

DataSpider Cloudは、2017年1月22日にリリースされ、提供が開始される。開発者にユーザーに使っていただくリリース日は、不安とともに大きな楽しみであるはずである。どのようなユーザーに使っていただきたいかについて聞いてみた。

データ連携ツールの導入をご検討されていて、自社でサーバー管理をすることが難しい方には、クラウドサービスの利点を活かしてぜひDataSpider Cloudをご使用いただければと思っています。DataSpider Cloudなら導入の手間なくどのような製品かを体験することも出来ます。

また既にDataSpiderを導入されている方でも、バージョンアップ作業が自動的に出来たり、コンピューティングリソースの拡張により規模に応じた利用プランでご利用ができたりと、大きなメリットがあると思います。」(テラスカイ 荒木氏)

DataSpiderというデータ連携基盤がクラウドサービスになったことにより、すべてクラウド上でデータ連携処理を完結させることが可能になりました。特にデータがクラウド上にある場合は、オンプレミスにデータ連携基盤を置くことなく100%クラウドで管理できるということは大きなメリットだと思います。ぜひこれまでDataSpiderを活用してきたユーザーにもそのインパクトを体験してだきたいですね。

また、これから購入を検討していただいている方にも、DataSpiderの使い心地をすぐに体感していただくことができるので、ぜひオススメしたいです」(アプレッソ 細見氏)

f:id:tokita93:20161216152510p:plain ▲DataSpider Cloudが提供する価値として、「Fully-managed」・「Ease of use」・「Elastic」が挙げられている

DataSpider Cloudというこの新しいクラウド型インテグレーションサービスは、「データインテグレーションにアジリティを」というキャッチコピーの通り、「アジリティ=敏捷性」が1つのテーマになっている。これまでDataSpiderを活用してデータ連携をしていた方にも、これから使用しようという方にも、その「アジリティ」は絶大な効果をもたらすようだ。

いよいよ2017年1月22日に世に解き放たれるDataSpider Cloud。ぜひその「アジリティ」を体感してみてほしい。

(※) 本記事はアプレッソ Advent Calendar 2016 - Qiita 18日目の記事です