Appresso Engineer Blog

アプレッソのエンジニアが書く技術ブログです。

リフレインする「ふりかえり」、刻む「カイゼン」のビート

はじめに

こんにちは。花粉症のカイゼンを日々願っています。開発部の野村です。 今年の2月から DataSpider Servista のスクラムチームでスクラムマスターをやっています。

年度末ですが、みなさん「ふりかえり」していますでしょうか?

わたしたちスクラムチームは1週間のスプリントで走っています。 毎週「ふりかえり」を行って、さらに高いレベルのチームを目指して「カイゼン」アクションを決めています。

私がスクラムマスターになってから試したプラクティスを、それぞれよかったことを交えて紹介していきたいと思います。

「ふりかえり」プラクティス


KPT

Keep, Problem, Try を書き出す、定番のプラクティスです。

How to

1週間のできごとを確認*1したあとに、10分程度でKeep, Problem をふせんに書き出してもらい、Keep の中からより良くする Try を出したり、Problem の中からその問題を解決するための Try を出したりして、アクションを決めていきました。

よかったこと

定番なだけあって、わかりやすくて、やりやすいです。また、Keep と Problem を対比することで、チームの気持ちが見えやすい点も良いです。


Team Radar

チームの価値、技術的能力などをチームメンバー同士で確認するプラクティスです。メンバー間の捉え方の違いを共有し、伸ばすこと、克服することを決めていきます。

f:id:nomuson:20180327113141j:plain
実際の結果です。コミュニケーション、衝突、カイゼンマインド、プロダクトの価値、がチームとして大事にするものとして出ました。

How to

事前にチームメンバーには「このチームにとって大事にしている4つのこと」を考えてきてもらいました。各自が思う大事にしていることをふせんで貼り出し、似たようなものをまとめて、チームとして大事な要素を4つ選びました。

選ばれた4つの要素はフリップチャートに軸とともに描きます。次にチームがどの位置にいるか 0 ~ 10 で各自考えて、なぜそのポイントにしたのかを添えて発表します。チームのポイントとしては平均値を取りました*2

最後に、ポイントの低い要素から克服するためのアクションを出し、ポイントの高い要素からより良くするためのアクションを出しました。

よかったこと

チームメンバー同士の要素に対する捉え方の違いが顕在化しました。価値観にフォーカスすることで、普段の KPT では出てこなかったチームのルールに関するアクションが出てきました。


Speed Car and Abyss

メタファーを通して、ふりかえりと将来を見据えるプラクティスです。

f:id:nomuson:20180327113013j:plain
Speed Car and Abyss

上の絵を描き、自分たちの現在置かれている状況と将来を考えます。それぞれのメタファーは以下の通りです。

  • スピードカーのエンジン:チームを促進させるもの。
  • スピードカーのパラシュート:チームを遅くさせるもの。
  • 深淵:チームにとっての危険。チームを危険に陥れるもの。
  • 橋:危険に打ち克つためのもの。
How to

ホワイトボードに絵を描き、メタファーのイメージを説明しながら、関連する物事をふせんに書いて貼っていきます。

「わたしたちはスピードカーです。速く前進させてくれるナイスな『エンジン』と、前進を妨げる『パラシュート』を持っています。現状とこれまでをふりかえって、わたしたちの『エンジン』と『パラシュート』に該当する物事を書き出してください。」と説明し、ふりかえりを行います。

次に『深淵』について考えます。「スピードカーの先には、落ちたら2度と上がれない『深淵』が待ち構えています。そこにはどんな危険があるか、何がわたしたちを陥れるのか、書き出してください。」

最後に『橋』についてです。「深淵に打ち克つためには、何がわたしたちに必要でしょうか。わたしたちがゴールに到達するための『橋』を書き出してください。」

貼り出したふせんを見渡しつつ、危険に打ち克つために必要なアクションを『橋』から決めたり、『パラシュート』にある障害を取り除くアクションを決めたり、していきました。

よかったこと

メタファーによって、大局的な意見が多く出ました。また、将来を見据える(Futurespective*3)ことで、立ち向かわなくてはいけない課題が露見し、それらに対処する行動を決めることができました。


WWW

KPTに似た3つのカテゴリでふりかえるプラクティス。Worked well(うまくいったこと)、kinda Worked(うまくいったけど、調整が必要なこと)、didn't Work(うまくいかなかったこと)を出してふりかえります。

How to

事実を確認したあとに、10分程度でWWWをふせんに書き出します。ふせんを分類分けして、didn't Work を解決するアクションや、kinda Worked を Worked well にするためのアクションを出します。 わたしたちが実践した時は、didn't Work から1つ取り扱う課題を決めて、それについて 5 whys(なぜなぜ5回)*4を2人1組のペアで行い深掘りしてました。

よかったこと

「うまくいっている」というキーワードから「やりたい(こうありたい)けれど、できていないこと」が出てきました。WWWはKPTと似ていますが、フォーカスする対象がより明確な状態であるためか、具体的な課題が多くでてきました。


Starfish

KPTの進化系のようなプラクティス。Stop, Less, Keep, More, Start の5つのカテゴリで意見を出してふりかえります。

How to

1週間の事実を確認し、10分程度で5つのカテゴリについてふせんに書き出します。Stop→Less→Keep→More→Startの順に書き出したふせんを発表して貼り出します。

Stop, Less に挙がった活動を辞めたり、減らしたり、More, Start に挙がった活動を次スプリントに始めることにしたりして、アクションを決めていきます。

よかったこと

More, Start というカテゴリがあることから、具体的なアクションがでやすいです。

(よかったことではありませんが)実際にやったときには、メンバーから意見が出しにくいとのフィードバックがありました。Starfishはアクションにフォーカスしたプラクティスですが、スプリントの事象をふりかえったこと、またモヤモヤした感情が募っていたスプリントであったことから、このタイミングに適したプラクティスではなかったのかもしれません。


「ふりかえり」をつづけ、感じたこと

KPTでもカイゼンアクションを出すことができますが、ずっと続けていると見方が膠着してより良い意見を出しづらくなります。さまざまなプラクティスを実践することで、視点や視座が変わり、チーム内だけでなくチーム外に対するカイゼンアクションも出てくるようになりました。一方で、プラクティスを毎回変えていると、ふりかえりの中で扱えない課題が出てきます。それらは Impediment List へ残して、別途対応していくようにしています。

個人としては、ふりかえりの時間配分に苦慮しています。1週間のスプリントのため、ふりかえり時間は1時間に抑えたいのですが、議論が盛り上がったり、アクションを出すのに煮詰まったりすると、1時間以上かかってしまうことがあります。そのため、ふりかえり中の各工程(ふせん書き出し、貼り出しなど)の時間配分を事前に決めて、ストップウォッチでラップを測りながら進行しています。

さいごに

アプレッソでは自分たちのスクラムの型を探すため、日々試行錯誤しています。

スプリントを回すだけでなく、他社のスクラムチームとの交流会の機会を求めています! 実際に協力会社の株式会社アークシステム様のご縁を通じて、交流会を開催しました。

devlog.arksystems.co.jp

ご興味のある企業様がいらっしゃいましたら、ぜひともお声がけください!

参考にした本、ウェブサイト

*1:実は事実の確認が重要だったりしますが、今回は割愛。

*2:1, 2ヶ月後にもう一度ポイントを出し合って、チームの成長を確認すると良い、とアジャイルレトロスペクティブズに書かれています。

*3:Retrospectiveと対比する造語と思われます。

*4:5 whysもプラクティスの1つ。