Appresso Engineer Blog

アプレッソのエンジニアが書く技術ブログです。

初めての JavaOne 2015 : よかったこととよくなかったこと

こんにちは、アプレッソ開発部の野口です。

私にとって初めての海外出張であり、大型カンファレンスも初めてならそもそも海外に行くのも初めて、という初めてづくしだった JavaOne 2015 が幕を閉じてから 1 週間あまりがたちました。

行った人、行かなかったけどいつか行ってみたいと思っている人、行こうかどうか迷っている人、そして来年の自分(あるいは同僚)に向けて、このへんで JavaOne 2015 のことをまとめてみたいと思います。

よかったこと

まずはよかったことからいきます!

1. でかい

JavaOneでかいです。

でかいです。

ところで、日本でも、例年 Oracle 公式イベントの Java Day Tokyo が開催されています。
Java Day Tokyo もとても大きく、また参加する価値のあるイベントですが、JavaOne はさすがに大きくその上を行きます。

イベント 参加者数 会場数 日数 セッション数 参加費
Java Day Tokyo 2015 2,500 *1 1 *2 1 44 *3 無料
JavaOne 2015 10,000(推定) *4 4 *5 5 439 *6 $1,650 *7

セッション数が圧倒的ですね!

参加費も圧倒的ですが!

2. Java をつくっている人、使っている人たちの顔が見える

JavaOne には、Oracle の内外で Java に携わる一線のエンジニア・アーキテクトが揃います。

Mark Reinhold や Brian Goetz に日ごろ聞きたかったことを直接聞くこともできますし*8生 James Gosling を拝むこともできます。

彼らはセッションの外でもその辺をうろうろしていたりするので、勇気さえあれば話しかけることだってできます。*9

また、有名人以外でも、Java を(本気で!)使っている人たちが世界中から集まっているわけです。
特に(James Gosling も登場した)Java Community Keynote では、世界中に Java のユーザがいて、コミュニティがあるんだなということが肌で感じられました。

3. さまざまな技術的トピックに触れられる

そして、もちろん JavaOne には豊富な技術的トピックが並びます。

トラックは、大きく 9 つに分けられています。

  • Core Java Platform
  • Java and Security
  • Emerging Languages
  • Java, DevOps, and the Cloud
  • Java and the Internet of Things
  • Java and Server Side Development
  • Java Clients and User Interfaces
  • Java Development Tools and Agile Techniques

Java のイベントなので当然 Java 言語、あるいは JVM の話題もたくさんあるのですが、セキュリティ、Scala や Groovy、Kotlin といった JVM 言語、DevOps とクラウド、 IoT、また開発ツールアジャイルといった話題に至るまで多種多様で、5 日間飽きることがありません。

技術的な情報を得ることはもちろん、Java を取り巻く技術的なトレンドを肌で感じられるというのも JavaOne に参加するメリットの一つです。

4. 蟹や牡蠣がうまい

例年、最終日は日本人参加者が集まる蟹パーティが企画されています。

appresso.hatenablog.com

この蟹というのが日本ではなかなかお目にかかれないもので*10、アメリカでおいしいものの思い出が少ない中、とてもおいしかったです。

そして、単独行で 4 日目までついぞ日本語を発さなかった私もついに日本語を話しました。

これがまた嬉しいもので、日本語を話せるのが、というより、Java 界隈のふだんはなかなか話す機会がない有名な人とも話すことができて、嬉しかったりします。
なんせ日本人参加者がそれほど多くはないので、仲よくなりやすいというのがあります。*11

もちろん、有名人というわけではなくても Java へのコミットメントが強い人が集まっているので、話していてとても楽しかったです。

最終日翌日(帰国する日)はきしださん(@kis)や鈴木さん(@yusuke_arclamp)たちと牡蠣を食べたりもしました。

f:id:appresso:20151110011612j:plain ▲Ferry Building の時計台

f:id:appresso:20151110011043j:plain ▲Hog Island の牡蠣!

これも実にうまかった。

5. Elton John が見られる *12

最高でした

疲れすぎてその後の Beck を見逃しましたが、体力さえあれば Beck も見られたなんて……。

余談ですが、Elton John って大御所なので、高いんですよ。
参考まで、今月の大阪来日公演が 15000 円~です。見れば絶対いいだろうとわかってはいても、なかなか手が出ないです。

時間も遅かったし Beck も控えてるから 1 時間くらいで終わるのかな~と思っていたらたっぷり 2 時間以上やってくれました。

その分も参加費に入ってるんじゃないかみたいな話はありますが、そこは楽しませていただくということで!

よくなかったこと

一方、よくなかったこともあります。

1. (飯が)でかい

アメリカ、飯がでかいです。

こればっかりは日本人には厳しい。
量が多いぶんだけ(また円安もあり、物価の高さもあり)、価格も高いです。*13

2. ホテルが高い

サンフランシスコ、ホテルが高いです。

もっとも、平時はそれほどでもないようなのですが、10 月のカンファレンスシーズンはひどいものです。

8 月半ばに予約しようとしたところ、シングルの部屋は壊滅状態で、ツインの部屋を探しました。
会場付近では予算上厳しく*14、どうにか会場からバスで 20 ~ 30 分ほどのところを確保しました。

それでも、ツインで 6 泊 $1700 ほど(20 万円強)です。*15
決して高級ホテルではなく、同系列のホテルが日本では 4000 円から泊まれるようなビジネスホテルです。

今の時期に来年の予約をすれば、会場付近の部屋が 10 万円ほどから見つかったりするようなので、行くことを決めたら早速リーズナブルなところを探して、早く予約することをおすすめします。
特に即決で予約すれば安くなる場合も多いですが、さすがに予定が確定できない場合は、直前までキャンセル可の枠でとりあえずおさえておく、というのも手です。

3. 「日本では絶対に得られない技術情報」は少ない

今年の JavaOne は、Java8 のリリースから 1 年半が経過し、まだ Java9 の頭はほとんど見えてこない、谷間の年でした。

そのためか、Java9 の話題も少なく、あってもちょっと触れるだけとか、具体的なリリーススケジュールまでは出さない、というものが見受けられました。
そのこともあり、「JavaOne に来ないとこれは知ることができなかった!」というような情報は、5 日間という期間の割には案外少なかったという印象もあります。

JavaOne の参加費が上がっていることでマネジメント層の参加者が増え、バリバリの技術者でなくてもわかるようなセッションが増えているのでは」という話もあるようです。
実際、JJUG のイベントをはじめ、日本で開催されている勉強会での話題と技術レベル的には同等か、ヘタしたら日本の方が高度なんじゃないか、とも感じることが時にはありました。*16

JavaOne に行けば日本では得られない○秘情報がざくざく得られて大量リード」みたいなのを期待して行くと、ちょっと裏切られるかもしれません。*17

まとめ

さて、いくつかよくなかったことも並べましたが、総じて、JavaOne には行く価値があります

円安傾向で厳しい昨今ではありますが*18、それでも、Java へのコミットメントが強い個人・組織(に属する人)はぜひ参加したほうがよいと感じます。

技術的に他者・他社をリードできる、あるいは世界の先端にキャッチアップできるというのももちろんありますが、一週間アメリカ西海岸の空気を吸うことで、何かが変わる感じがします。
なかなか定量化できない価値なので伝えるのが難しくてもどかしいところですが!
でも、それが少しでも伝わればと思って、たくさんのブログ記事を書いてきました。

今年は少し物足りなさも感じましたが、来年は Java9 のリリースが予定されていて、新しいトピックも数多く出てくるものと予想されます。

来年も……行きたい!
でも、もし予算上会社から一人しか出せないとしたら、行ったことない人に行ってほしい、という気もします。

今年の JavaOne については報告会も企画されているので、興味のある方はぜひ参加してみてください。既に満席ではありますが……! 多少はキャンセルが出るかもしれません。*19

jjug.doorkeeper.jp

おまけ 1 : JavaOne 2015 名場面集

名場面の総集編です。

名場面その 1「あの~、『よつばと!』の最新刊なんですけどー」

ジャパンタウンの紀伊國屋書店に行ったら、日本人が日本人の店員に「あの~、『よつばと!』の最新刊なんですけどー」とか日本語で聞いていたり、アメリカ人っぽい年配の人が日本の AKB っぽいアイドルのグラビア本を熱心に見ていたりしてなかなか異様な空間でした。

旅行・出張中はともかく、もしサンフランシスコに住むことになったら愛用しそうな書店です。

名場面その 2「NoClassDefFoundError」

Mark Reinhold が Project Jigsaw を紹介する流れのうちの一コマで。
地獄のように長いクラスパスをクラスローダが延々舐めていく様子を(模式的に)見せたあとだったので、会場が湧きました。

それを(それ以外も)解決するのが Project Jigsaw です。

名場面その 3「オラクルの社員だ」

Keynote の終盤では、Sun の 創業者・元 CEO である Scott McNealy からのビデオメッセージが流れました。

そしてこの Keynote で最大の笑いが生まれたのが、「スコットによる Java 開発者の悪夢トップ 12(トップ 10 には収まらなかった)」の第 4 位、

  • OSS を愛しているのに、オラクルの社員だ」

でした。

懐が広い。

名場面その 4 : "playing with gasoline"

"Combining Concurrency and Collections" という、コレクションフレームワークをマルチスレッドで使う場合の注意点おさらいみたいなセッションにて。

マルチスレッドプログラミングでは volatile というキーワードを使うことがありますが、volatile が出てくるたびに逐一 "adds some gasoline" とか "playing with gasoline" とか言っていて、安易に volatile 使うものではないなということが強く印象付けられたのでした。
ガソリンて。

名場面その 5 "atypical Java idioms"

"James Writes Java: What I Have Learned by Reading James Gosling’s Code" という、James Gosling のコードを読んだスピーカーがそのエピソードを語るセッションにて。

色々と「それはどうなんだ」と言いたくなるような Java のイディオムが紹介されて、なんと……と思ってふとセッションのサマリを読んだら見つけたフレーズです。

... including some atypical Java idioms ...

19 行あるサマリのうちの 1 行にぽつりと。

atypical
音節a・typ・i・cal 発音記号/eɪtípik(ə)l/
【名詞】
不定型の,異常な,アブノーマルな; 不規則な.
atypicalの意味 - 英和辞典 Weblio辞書

oh...

名場面その 7「スライドは公開される?」

"Agile Project Management Antipatterns" というセッションの開始を待っていたところ、隣に座った人に「スライドが公開されるか知ってますか?」と聞かれて、まだ始まってもいないのにそんなこと知らないし、よりによってこのタイトルのセッションでスライドが公開されるかどうか気にするのがアンチパターンっぽくて面白いなとこっそり思っていました。*20

名場面その 8 : Getting rid of checked Exception

"Ask the Architects" という、OracleJava 設計者一同に参加者が色々と質問をするというセッションで、「チェック例外は……なくした方がいいのでは?」という質問があり、対話の端々で爆笑が生まれていました。

こういう、ふだん考えていることについて最前線のエンジニア・アーキテクトの意見を聞けるのが JavaOne のすごく面白いところですね。

詳細はこちらをご覧ください!

appresso.hatenablog.com

名場面その 9「現場で起きてるんだ」

Acroquest Technology の石田さん、谷本さんのセッションにて。

あるシーンの決めゼリフとして、踊る大捜査線の「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」を英語でかましていたのですが欧米人を中心とする JavaOne people には全く反応がなく、なぜ入れたのか不明で逆に面白いみたいになっていました。

さすがだ……と思いました。

名場面その 10 : 人生にとって大事なことは

4 日目に Treasure Island で観た Elton John が最高……最高でした。

f:id:appresso:20151029183548j:plain ▲ステージの写真はいまいちキレイに撮れていないので開演前の鈴なりの客席

ついうっかり「人生にとって大事なことは Java とかそういうことではないのでは……?」という思考に至るほどでした。

おまけ 2 : JavaOne 2015 教訓集

教訓の総集編です。
来年のためにぜひ役立ててください。

教訓その 1 : セッションの選定と登録は期間に余裕を持って行いましょう。

会期が近づくと、人気のセッションはほぼほぼ満席です。
(ただし、直前になるとキャンセルが出て、あく場合もあるので、直前に一度チェックしてみるというワザもあります)

教訓その 2 : 案内はよく読みましょう。

受付で渡されるリーフレットには現場のお役立ち情報が乗っていたりします。
でも適当に読み飛ばしているとランチの時間や場所を間違えることになるので、気をつけましょう。

教訓その 3 : 英語によるセッションに参加する前に英語力をつけましょう。

あ……あたりまえですね。

Q & A 形式のセッションだと、特に英語力不足を痛感することになります。
苦手な人は Q & A 形式のものを少なめにしたり、できるだけ前に座って聞き取りやすくしたりといった工夫が必要です。

教訓その 4 : 出る前に一度、セッションのサマリはよく読みましょう。

なんとなくタイトルだけでセッションを取ると、思ってたのと違う場合があります。
まあ、それはそれで面白いことも多いのですが。

教訓その 5 : スライドの字は君が思うよりもいつも(とは言わないが)小さい。*21 狭いところに入れてもらってでも、可能な限り前に座ろう。

特に今年はスクリーンが小さい会場もしばしば見受けられ、辛い場面がありました。

教訓その 6 : (とくに人気が予想されるセッションでは)必ず開始 10 分前までに会場に入りましょう。

JavaOne では、開始 10 分前になるとキャンセル待ちの人を入れてしまいます。
登録していても入れなくなります。

教訓その 7 : 各会場の広さやスクリーンの大きさといった特徴を早めに把握し、予想される混雑度も勘案して会場入りの時間を調整しよう。

先述のように、スクリーンが小さかったり、後ろからだと(人の頭で)見にくかったりする会場があります。
人気のセッションだな、とかコードが出てくるセッションだな(スクリーンが見えないと話にならないな)、と予想される場合は、早め早めに入りましょう。

おまけ 3 : JavaOne 2015 レポート(およびフォロー記事)一覧

appresso.hatenablog.com

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appresso.hatenablog.com

appresso.hatenablog.com

appresso.hatenablog.com

See you next year!

*1:http://codezine.jp/article/detail/8629

*2:東京国際フォーラム

*3:https://www.oracle.com/webfolder/s/delivery_production/docs/FY15h1/doc12/JavaDayTokyo-2015-agenda.pdf

*4:http://appresso.hatenablog.com/entry/2015/10/26/172044

*5:Hilton, Moscone North, Moscone South, Marriott Marquis, Parc 55 Hotel

*6:https://events.rainfocus.com/oow15/catalog/oracle.jsp?event=javaone&search.event=javaoneEvent

*7:約 2 ヶ月前までの早期登録の場合

*8:英語力が必要ですが!

*9:「あっ Mark Reinhold だ……」みたいなことがちょいちょいありました

*10:アメリカ西海岸北部で取れる蟹で、日本で新鮮なものを食べるのは難しいようです

*11:蟹パーティの参加者は約 30 名でした

*12:出演者は毎年変わります。昨年は Aerosmith だったようです

*13:写っているペンネアラビアータは店で(前菜の類を除いて)一番安かったメニューで、テイクアウトで $13.5 → 1700 円くらいしました。これにチップが乗ると 2000 円を超える

*14:Oracle が公式にリーズナブルなホテルを用意してくれている、ようなのですが、その時点で残っているところは一泊 $350~ という感じで、厳しかった

*15:しかも一人で泊まるので、一泊 3 万円以上!

*16:前述の話のように「参加者のニーズに合わせている」のだとすれば、そうではない、ということになりますが

*17:もっとも、たとえば DukeScript のように日本ではあまり話題になっていない技術に触れる機会もやはり得られます。開催期間が長いだけあって、「幅が広がる」というのは JavaOne の利点の一つだと思います

*18:参加費、ホテル代、航空機代その他で総計 60 万円くらいかかりました。会社に感謝。

*19:なお私は私用のため参加できません。痛恨の極み……!

*20:コード例がたくさん出るようなプレゼンテーションなら、写真を撮るかどうかにもかかわるので重要ですが、この手の話はスライドとかよりは話をどう理解するかが重要なんじゃないかな……と思ったので

*21:ついでに声も小さい場合がある。